その①はこちら
高知県室戸市の中山間部集落、日南(ひなた)で生産されている、幻の伝統野菜「ボタナス」とその産地のことを、紹介しています。
ボタナスの美味しい理由
日南(ひなた)の農産物は美味しい、という評判をよく耳にします。
中山間部ならではの寒暖差があって、海岸線の町よりも気温が3度程が低いとのこと。
この辺りは、南国土佐とはいえ、冬はかなり寒いそうです。
美味しい野菜が育つ理由は、この寒暖差と水(湧水・朝露・夜露)が影響しているのではないか、とのことです。
日南(ひなた)にかぎらず、田舎の農家さんは、畑や田んぼを取り巻く環境条件に、とても敏感で、その影響を熟知しています。
周辺の自然環境や、人口構造物が与える農作物への影響に、とても敏感なのです。
あっちの田んぼより、川のこっち側にある田んぼの米の方が、美味しくなるのよ。
作り方はどっこも同じよ、でもこっからこっちで、味がちゃう。
あっちもこっちも、やってること同じで、こっちだけ高い値段つけられへんやろー
特別なことはせやせんき、ここで作れば美味しくなるがよ
あんまりお金にこだわると、楽しくなくなってしまうよ。
私は、ほっこりすると同時に、「もったいねー!」って思ってしまいます。
ボタナス栽培で苦労すること
ボタナスは、巨大に成長するナスなので、花が咲いてから出荷までに、1ヶ月位の期間が必要だとのこと。(普通のナスは20日間位らしい)
実はどんどん重くなるので、一つ一つ大きさを見て、株ごと地面に倒れないように手入れします。
水やりなどの手間がかかるし、成長に時間がかかる分だけ、病気などのリスクも高いとのこと。
また、野生動物からの被害もあり、無防備に栽培することはできないのです。
被害を防ぐための、防除ネット・電気柵・罠なども必要です。
連作障害対策の、土壌の手入れも必須で、さらに肥料等の価格高騰があります。
農場の維持管理だけでも、相当の経費はかかるのとのことです。
ボタナスの価格
みんなが楽しみにしている、夏が旬のボタナス。
季節になると「ボタナス、まだですかねー?」
生産者の谷口さんは、待ちわびる人から、尋ねられるそうです。
現在、ボタナスを出荷すると、完売するそうです。人気商品なんですね!
焼いたり、フライにしたり、産地で暮らす人たちは、ボタナスの旬を楽しんでいます。
しかし、農家さんの経営は、厳しいとのこと。
多くの一次産業の町では、出荷する産品の価格が安価で、生産者の利益が少ない、ということを耳にします。
現在、ボタナスは、日南(ひなた)の6件の農家さんでのみで生産され、出荷数の少ない希少な伝統野菜ですが、ボタナスだけの経費を考えると、赤字だそうです。
現在、ボタナスの店頭価格は、全国のナスの平均価格よりも安いのだそうです。
価格の設定には、いろいろと経緯があるのだろうと、想像しますが…
設備投資の分、丹精込めた手間の分、家族・子育てに必要な分を、価格に反映出来なければ…
ボタナスという伝統も、日南(ひなた)という集落自体の承継も…
田舎の産地、近い将来の危惧
日南(ひなた)の生産者さんは、地域の自然環境に特化した、腕利きの職人さん達です。
自然相手の生産者さんは、日々の作業、道具のお手入れ、天候に応じた準備など、余念がありません。
農家さんの中には、80代で現役バリバリ、鉄人のような方もいらっしゃいます。
それでも、山の中に分け入ったり、重い機械を運んだりするのは、しんどくなって「しきび」や「黒糖作り」などはやめるなど、取り扱う品目は、少なくなっている状況です。
これから先、日南(ひなた)の農家さんが提供している、中山間部の自然の恵みは、このままでは、減っていきます。
全国では、全市町村数の50%以上となる885市町村、国土の60%以上は、すでに過疎地域です。そこに全人口の9%の人々が暮らしています。
参考:(一社)全国過疎地域連盟
今までの当たり前が、なくなっていく。
変化はドカンと起きるものではありません。
気がつかないうちに、少しずつ、いつの間にかに…
ほとんどが知らない町で、起こっていることです。
「ボタナス、売ってないのね?」と、会話が聞こえるかもしれない。
その時には、ボタナス以外の沢山の物事が、失われているかもしれない。
田舎での改善に向けた取り組み
日南(ひなた)では、集落活動支援員2名の方が、地域支援に尽力されています。
ボタナスの新たな販路開拓や、伝統野菜の承継にも取り組まれています。
活動の1つとして、日南(ひなた)地区内に、新たにボタナス畑を整備して、地区外の人たちを対象とした、ボタナスのオーナー制による生産が行われています。
ボタナスオーナーは、整備されたボタナス畑で、オーナー同士が協力して、畑全体の手入れを行い、自分の株から収穫します。日々欠かせない作業、草刈り、水やり等は、現在13人のオーナーさんが話し合って決めています。
輪番制にするなど、畑につきっきりにならないで、収穫するための工夫をしています。
オーナーは、農家さんだけでなく、民宿経営の方もいらっしゃいます。
もうすぐ、日南(ひたな)に集落活動センターが完成します。
ここは、地域の農作物を使った郷土料理を振る舞ったり、地域の人の交流の場として活用されるとのことです。
日南(ひたな)には、地域おこし協力隊の方もいます。
農家さんが助言しながら、ボタナス栽培に取り組んでいるとのことです。
おわりに
大きくて、美味しそうなボタナスを、お土産にいただいちゃいました。
「これは、小さくていかんな、これならいけるか?」チョキチョキ。
生産者さんのボタナスの大きさや、形へのこだわりがハンパないです。
谷口さん、集落支援員の皆さん、ありがとうございました。
家に帰って、焼きボタナス作りました。
大きなボタナスを焼くと、皮の中で、ナスがグツグツしてきて、「とろ〜」と柔らかくなります。
大きさの割には、意外と早く火が通るような、気がしました。
調理中に火を通した時の、変化が特徴的です。
大きなボタナス、1人でペロっと食べちゃいました。
ブログ読んでいただき、本当にありがとうございます。
田舎の楽しみ通信隊のビジョンは
「田舎生活の楽しみを日常的に感じて、次世代に承継できる社会」